DIVISIONS
トランススケール構造生命科学
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稲葉 謙次(いなば けんじ) 教授 病院地区教授生体防御医学研究所
細胞内には厳正なタンパク質品質管理システムが存在し、それを支えるため、細胞内のレドックス、pH、金属イオン濃度などの化学環境は厳密に制御されています。我々はこれら細胞恒常性維持システムのメカニズムを解明するため、構造生物学的手法、細胞生物学的手法、さらにはケミカルバイオロジー、プロテオミクスなどを用いて統合的研究を行っています。
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渡部 聡(わたなべ さとし) 准教授 病院地区准教授生体防御医学研究所
真核細胞の分泌経路では、合成されたタンパク質の折りたたみを補助するシャペロンタンパク質、分泌タンパク質を効率よく細胞外に輸送させるカーゴ受容体、亜鉛など必須な金属イオンを取り込む金属イオントランスポーターなど、多様なタンパク質が互いに連携して、タンパク質品質管理が行われている。我々は、クライオ電子顕微鏡やX線結晶構造解析を用いて、ターゲットタンパク質の立体構造を高分解能で決定し、生化学や細胞生物学手法と組み合わせることで、タンパク質品質管理機構の分子メカニズムの解明に取り組んでいる。
図 カーゴ受容体ERGIC-53と補助因子MCFD2との複合体の全長のクライオ電顕構造(左)とヘッド領域の高分解能電顕マップ(右)
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嶋田 睦(しまだ あつし) 准教授 病院地区准教授生体防御医学研究所
エンドサイトーシスや細胞遊走などの生命現象は細胞膜の変形や細胞骨格の再編成を伴うダイナミックな生命現象であり、外界からの刺激を細胞の対応する形態変化につなげるシグナル伝達経路によって制御されている。シグナル伝達経路の構成タンパク質には脂質膜を変形するタンパク質も含まれる。我々は主にX線結晶構造解析や生化学的手法を用いて経路の構成タンパク質の原子分解能レベルでの機能を解明することで、真核細胞の活動を支えるこれらの生命現象の巧妙な仕組みの解明を目指して研究を進めてきた。最近は、電子顕微鏡を用いた脂質二重膜中の膜タンパク質の新規の高分解能イメージング手法の開発と創薬標的を含む様々な膜タンパク質への応用も進めている。